最終更新: 2026年06月
「Vibe Coding」という言葉を知っているだろうか。
プログラミングの専門知識がなくても、AIに「こういうツールを作って」と話しかけるだけでコードが生成される——そういう感覚で開発を進めるアプローチを指す。2026年現在、これがMQL5のEA開発でも現実のものになっている。
私は会社員でFX歴7年になる。最初の3年間はEAに興味はあったが「MQL5は専門家が学ぶものだ」と思い込んで手を出さなかった。それが、ClaudeなどのAIを使いはじめてから状況が一変した。今では自分の取引スタイルに合ったEAを自分で作れるようになった。
本記事は「プログラミングがまったくわからない」という状態からEAを作りたい人向けに書いている。
Vibe CodingとMQL5 EA開発:何が変わったのか
まず「従来の壁」を整理する。
MQL5はMetaTrader5専用のプログラミング言語で、文法はC++に近い。変数宣言・関数・ループ・ポインター——プログラミング未経験者には「別の言語を一から覚える」に等しい障壁だった。
Vibe Codingはこの障壁を取り払う。具体的には:
- 日本語で戦略を説明する → ClaudeがMQL5コードに変換する
- エラーが出たらコピペで投げる → Claudeが修正案を返す
- 動作を変えたいときも言葉で依頼する → Claudeがコードを更新する
筆者が実際に経験したタイムラインは「ゴールデンクロスを使ったシンプルなEAが最初の試行から3時間でデモ口座で動いた」。
ただし正直に言っておく。「動いた」と「稼ぐ」は別物だ。EAを作れるようになることと、利益が出る戦略を作ることは全く別の話で、バックテストと検証なしの本番運用はお勧めしない。
免責: FX取引は元本損失リスクを伴います。EAを稼働させる前に必ずデモ口座でのテストを行ってください。
必要な環境を整える:5つの準備
準備1:MetaTrader5をインストールする
FX口座を開設して(デモ口座でOK)、MT5をダウンロードする。インストール後、上部メニューの「ツール」→「MetaEditor」でコードエディタを起動できる。
準備2:ClaudeのAPIキーを取得する(または無料プランを使う)
https://claude.ai でアカウントを作れば、無料プランでもコード生成は使える。API利用(自動化目的)には有料プランが必要だが、「手動でコピペして開発する」だけなら無料でできる。
準備3:MetaEditorを使えるようにする
MT5を起動したら「ツール」→「MetaEditor」を開く。ここが実際にMQL5コードを書く場所だ。
- 新規EAを作る: File → New → Expert Advisor (template)
- 保存場所: MQL5/Experts フォルダに.mq5として保存
準備4:EAを動かすための口座設定
MT5の「ツール」→「オプション」→「エキスパートアドバイザー」で「自動売買を許可する」にチェックを入れる。
準備5:デモ口座の準備
本番口座で試す前に、必ずデモ口座で動かす。多くのFXブローカーが無料でデモ口座を提供しており、実際の市場データで仮想資金を使って動作確認できる。
ステップ1:Claudeへの最初の依頼文(プロンプト)の書き方
ここが最重要だ。「いい感じにEAを作って」ではうまくいかない。
悪い例:
FXのEAを作ってください。
良い例:
MetaTrader5(MQL5)で動くEAを作成してください。
【戦略の内容】
- 通貨ペア: USDJPY
- 時間足: 1時間足
- エントリー条件:
- ロング(買い): 20期間EMAが50期間EMAを下から上に抜けたとき(ゴールデンクロス)
- ショート(売り): 20期間EMAが50期間EMAを上から下に抜けたとき(デッドクロス)
- 決済条件:
- ストップロス: エントリー価格から50pips
- テイクプロフィット: エントリー価格から100pips
【その他の条件】
- 同時に1ポジションのみ保有
- ロットサイズ: 固定0.01ロット
- MagicNumber: 12345(他のEAと混在しないようにするための番号)
【技術要件】
- CTrade ライブラリを使用してください
- インジケータのハンドルはOnInit()で作成し、OnDeinit()でリリースしてください
- エントリー判定は前の足が確定した後に行ってください([1]インデックスを使用)
具体的であることが精度を決める。特に「エントリー条件」と「決済条件」は数値まで明示する。「適切な損切幅で」という曖昧な表現は避ける。
ステップ2:生成されたコードをMetaEditorに貼る
Claudeが生成したコードをコピーして、MetaEditorに貼り付ける。
- MetaEditorで「File」→「New」→「Expert Advisor (template)」を選択
- テンプレートコードを全部選択して削除
- Claudeのコードを貼り付ける
- F7キーでコンパイル
コンパイルに失敗したとき(下部の「エラー」タブに赤いメッセージが出る):
エラーメッセージをそのままコピーして、Claudeにこう投げる:
コンパイルで以下のエラーが出ました。修正してください。
エラー:
[ここにエラーメッセージを貼り付ける]
元のコード:
[ここにコード全文を貼り付ける]
これを繰り返す。最初のうちは2〜3回で通ることが多い。
ステップ3:ストラテジーテスターでバックテストする
コンパイルが通ったら、必ずバックテストを実施する。
MT5の「表示」→「ストラテジーテスター」を開く。
設定方法:
- エキスパート: 作成したEAを選択
- 通貨ペア: USDJPY(戦略に合わせて)
- 時間足: H1
- モデル: 全ティック(精度が高い)
- 期間: 最低1年以上(できれば3〜5年)
バックテストを走らせて、以下の数値を確認する:
| 指標 | 目安 | 注意が必要な値 | |---|---|---| | プロフィットファクター | 1.3以上 | 1.0〜1.2は損益ほぼトントン | | 最大ドローダウン | 資金の20%以下 | 30%超えは資金管理リスク | | 取引回数 | 50回以上 | 少なすぎると統計的に不安定 | | シャープレシオ | 0.5以上 | 負の値は危険 |
バックテスト結果が悪くても落ち込まなくていい。「戦略の修正 → Claudeに相談 → 再テスト」のサイクルが本当の開発作業だ。
ステップ4:Claudeへの改善依頼の仕方
バックテスト結果を見て改善するときのプロンプト例:
バックテストで以下の問題が出ました。改善してください。
【現在の問題】
- 損切りが多すぎる(損切/利確の比率が3:1になっている)
- ダマしのゴールデンクロスに何度も引っかかっている
【追加したい機能】
- RSI14が50以上のときだけロングエントリーを許可する
- RSI14が50以下のときだけショートエントリーを許可する
【現在のコード】
(コード全文を貼り付ける)
「現在の問題」→「追加したい機能」→「現在のコード」の3点セットで依頼すると、的確な修正が返ってくる。
よくある落とし穴と対処法
落とし穴1:バックテスト結果を過信する
バックテストは過去への最適化に過ぎない。筆者の経験では、バックテストで好成績でも実際のデモ口座で動かしたら別の結果になることが多々あった。最低3ヶ月のデモ口座でのフォワードテストを経てから判断する。
落とし穴2:コードの意味を全く理解しないで使う
「Claudeが作ったから信頼する」では危険だ。せめて「エントリー条件はどこに書いてあるか」「ストップロスはどこで設定されているか」を確認する習慣をつける。重要な部分をClaudeに「この部分の動作を日本語で説明して」と聞くのが手っ取り早い。
落とし穴3:本番口座で最初から動かす
必ずデモ口座から始める。特に「ロットサイズの設定ミス」は致命的だ。0.01と設定するつもりが1.0になっていたというミスが初心者に多い。デモ口座でロットと損益が期待通りに動いているかを確認してから本番に移行する。
MQL5ウィザード:さらに簡単なもう一つの選択肢
MetaEditorには「MQL5ウィザード」というGUIツールが内蔵されている。移動平均線・RSI・MACDなどの定番インジケータを組み合わせるだけで、コードを書かずにEAを自動生成できる。
使い方:
- MetaEditor → File → New → Expert Advisor (using Wizard)
- Trading signals(エントリー条件)を選択
- Trailing stop(トレーリングストップ)を設定
- Money management(資金管理)を設定
- 「Finish」でコード生成
シンプルな戦略ならウィザードで十分。Vibe Codingと組み合わせて「ウィザードで基本構造を作り、細かい調整はClaudeに依頼する」という使い方もある。
Claudeと会話しながらインジケータが作れるhedgrow-fxはこちら。
よくある質問(FAQ)
Q: プログラミングの知識が全くなくても本当にEAを作れますか?
A: 基本的なEAは作れます。ただし「デバッグする」「エラーの原因を特定する」という場面では、コードの読み方の基礎知識があると作業が速くなります。Claudeに「このコードで○○の部分がどう動くか教えて」と聞きながら少しずつ覚えていくのがおすすめです。
Q: 作ったEAを24時間動かすにはどうすればいいですか?
A: VPS(仮想専用サーバー)を借りてMT5を常時稼働させる方法が一般的です。国内VPSサービスは月額1,000〜3,000円程度から使えます。
Q: EAを販売することはできますか?
A: MQL5 MarketやGogoJungle等のプラットフォームで販売できます。ただし「AIが生成したコード」であることの開示と、十分な実績データの提示が求められます。
Q: Claudeで作ったEAが急に動かなくなりました。どうすれば?
A: まずMT5のエキスパートタブ(ログ)を確認します。エラーメッセージをコピーしてClaudeに「このエラーを直してください」と投げるのが最も効率的です。よくある原因は「接続切れ」「パラメータ設定の不一致」「MT5のアップデートによる仕様変更」です。
免責事項: 本記事はMQL5 EA開発の技術的情報提供を目的としています。EAは収益を保証するものではなく、FX取引には元本損失リスクが伴います。すべての損益は投資家自身の責任です。実際に資金を投じる前に、必ず十分なデモ口座でのテスト期間を設けてください。
