最終更新: 2026年06月
「生成AIを使えばFXのEAが誰でも作れる時代になった」——こういう話を聞くようになったのは2025年頃から。実際に試した私の正直な感想は「作れるようにはなった。ただし思ったより手間がかかる」だ。
私は会社員でFX歴7年。プログラミングは全くできない状態からスタートして、ChatGPTやClaudeを使ってEAを作る試みを続けてきた。本記事では「生成AIでEAを作れますか?」という質問に、良い面も悪い面も含めて正直に答えたい。
結論から言う:「作れる」が「そのまま使える」は別の話
まず誤解を解いておく。
「生成AIに頼んだらEAが完成して、あとは動かすだけ」という状態にはならない。正確には:
生成AIができること:
- 日本語で戦略を説明すれば、MQL5コードの「ドラフト」を作ってくれる
- エラーメッセージを投げれば修正案を返してくれる
- 機能を追加したいときに言葉で依頼できる
- コードのどの部分が何をしているかを日本語で説明してくれる
生成AIができないこと:
- コンパイルエラーが出たコードが即座に完璧になる(修正サイクルが必要)
- バックテストを代わりに実施してくれる(自分でやる必要がある)
- 「勝てる戦略」を考えてくれる(戦略は自分が決める)
- 作ったEAが利益を出すことを保証する
この前提を理解した上で使えば、プログラミング未経験の私でもEAが作れるようになった。それは本当のことだ。
免責: EA(自動売買ツール)はリスクを含む金融商品です。FX取引で損失が生じる可能性があり、元本が保証されるものではありません。
どのAIツールを使えばいいか:3つの選択肢の比較
各AIツールには「得意な用途」があり、目的に合わせて使い分けることで効率が上がる。
ChatGPT(GPT-4o系)
向いている用途: 戦略のアイデア出し、基本的なコード生成
日本語での対話が自然で、「こういう条件でエントリーしたい」という相談相手として使いやすい。ただしMQL5の細かい仕様(インジケータハンドルの管理など)に関してはエラーが多めに出る印象がある。
ChatGPT無料版でも基本的なEAコードは生成できる。ただし1回の会話でやり取りできる長さに制限があるため、長いコードを何度も修正するケースでは有料版(GPT-4o)が効率的だ。
Claude(Anthropic)
向いている用途: 長い仕様書の読み込み、コードの整合性確認
会話のコンテキストを長く維持する点が優れている。「前に話した条件に加えて、これも追加して」という継続的な対話が得意。コード修正の際に「このコードのどこが問題か」を詳しく説明してくれる。
ClaudeがエントリーポイントのサポートとなるFXツールhedgrow-fxは、MQL5コード生成に特化したインターフェースを提供している。一般的なClaude.aiとは異なり、FXインジケーター・EA生成に特化した対話環境が整っている。
Gemini(Google)
向いている用途: 他のGoogleサービスとの連携が必要な場合
MQL5開発においては現時点では上の2つより使用頻度が低い。
私の使い方: アイデア段階はChatGPT、実際のコード生成と修正はClaude、という使い分けが多い。
実際の手順:生成AIでEAを作る4ステップ
4つのステップを順番に進めることで、プログラミング未経験でもEAの動作確認まで到達できる。
ステップ1:戦略を言語化する
これが最重要。AIへの入力の質がそのまま出力の質になる。
具体的な戦略の書き方:
以下の条件のMQL5 EA(MT5用)を作成してください。
エントリー:
- ロング: RSI(14)が30以下から30以上に回復したとき
- ショート: RSI(14)が70以上から70以下に下落したとき
決済:
- ストップロス: エントリーから40pips
- テイクプロフィット: エントリーから80pips
設定:
- 固定ロット: 0.01
- 同時ポジション数: 最大1つ
- MagicNumber: 99999
曖昧な表現(「いい感じの損切り」「適切なタイミング」)は使わない。数値まで明示するのが鉄則だ。
戦略の言語化で詰まるケースが多い。「どんな条件でエントリーするか」を自分で明確にできていない段階では、AIに依頼しても曖昧なコードが返ってくる。まず「自分のトレードルールを箇条書きで書く」練習から始めると効果的だ。
ステップ2:コードを受け取ってコンパイルする
生成されたコードをMT5の「MetaEditor」に貼り付けてF7でコンパイルする。
初回でコンパイルが通ることは少ない。エラーが出たら:
以下のコンパイルエラーが出ました。修正してください。
エラーメッセージ(MetaEditorの下部に表示されるもの):
「ここにエラー文を貼り付ける」
コード全文:
「ここにコードを貼り付ける」
2〜3回のやり取りでコンパイルが通るケースが多い。
MetaEditorの開き方: MT5から「ツール」→「MetaQuotes言語エディタ」で開く(F4キーショートカット)。エラーメッセージはエディター下部の「エラー」タブに表示される。日本語のエラーはないが、Google翻訳で英語エラーを日本語に変換してAIに貼り付けることも有効だ。
ステップ3:バックテストを実施する
コンパイルが通ったら、MT5の「ストラテジーテスター」で過去データを使って動作確認をする。
バックテストで確認すること:
- EAが期待通りのタイミングでエントリー・決済しているか
- ロットサイズが設定通りになっているか
- 損切りと利確が機能しているか
最初は「動いているか確認する」のが目的。損益は後で検討する。
バックテストの期間は最低1年、できれば3〜5年を推奨する。短い期間のテストだと「たまたま良い相場だった」結果が出やすい。複数の相場環境(トレンド・レンジ・高ボラ)を経験した期間でのテストが信頼性を高める。
ステップ4:改善を繰り返す
バックテストで問題が見つかったら、Claudeに相談して改善する。
改善依頼の例:
バックテストで気になった点があります。修正をお願いします。
問題1: ロングのエントリーが早すぎる(RSIが回復途中で入ってしまっている)
追加したい条件: RSIが30以下から30を超えた後、「1本前の足が終値確定してから」エントリーする
問題2: 損切りに引っかかりすぎる
変更したい内容: ストップロスを40pipsから60pipsに変更する
コード全文:
(コードを貼り付ける)
改善サイクルは「1回で完成」ではなく、10〜20回のやり取りで少しずつ精度を上げていくものだ。「なかなかうまくいかない」と感じたら、それは正常なプロセスだ。諦めずに問題を1つずつ潰していくことが成功への道だ。
実際に使ってみてわかったこと
良かった点
1. アイデアを素早く形にできる
「こういう条件を試したい」と思ったとき、以前は「自分では作れない」で終わっていた。今はその日のうちに動くコードが手元にある。これは体験として大きな変化だった。
2. 複数のパターンを短時間で比較できる
「損切り40pipsと60pipsでどちらが成績が良いか」というテストを、以前なら専門家に頼む必要があった。今は自分でコードを変えてすぐにバックテストを回せる。
3. EAの動作を自分で理解できるようになる
Claudeに「このコードのこの部分の動作を説明して」と聞きながら作業することで、プログラミングの基礎が少しずつわかってくる。半年続けた結果、簡単なロジックなら自分でコードを読めるようになった。
4. 失敗のコストが低い 従来、EA開発を専門家に外注する場合は数万円〜数十万円のコストがかかった。生成AIを使えばAIツールの月額費用(数千円程度)だけで同じことができる。失敗してもコストが小さいため、試行錯誤しやすい。
思った以上に大変だった点
1. 最初のコンパイル成功まで時間がかかる
「プログラミング不要」と聞いていたが、コンパイルエラーの対処に最初は2〜3時間かかることもあった。慣れれば15〜30分になるが、全く手間がかからないわけではない。
2. 「戦略の有効性」は自分で判断するしかない
AIはコードを書いてくれるが「この戦略は勝てますか?」への答えは出してくれない。バックテストの解釈、過剰最適化の判断、フォワードテストの期間設定——これらは自分が学ぶ必要がある。
3. パラメーター最適化の落とし穴
AIとのやり取りを繰り返してパラメーターを調整していると、いつの間にか「過去データに対して最適化しすぎ(カーブフィッティング)」の状態になりやすい。バックテストで良い結果が出ても実取引で崩れるケースがある。
Claudeと会話しながらインジケータが作れるhedgrow-fxはこちら。
生成AIで作ったEAを使う前の必須チェックリスト
- [ ] デモ口座で最低1ヶ月以上の動作確認をした
- [ ] バックテスト期間は3年以上を確認した
- [ ] ロットサイズが意図通りに設定されていることを確認した
- [ ] 損切りが機能することをバックテストで確認した
- [ ] 最大ドローダウンが許容範囲内(自分の資金の20%以内など)であることを確認した
- [ ] EAの「MagicNumber」が他のEAと重複していないことを確認した
- [ ] 取引開始前に最小ロット(0.01)から始めることを決めた
- [ ] EAを停止する条件(ドローダウン上限等)を事前に決めた
これをすべてクリアしてから本番口座に移行することを強くお勧めする。
まとめ
生成AIによるEA作成は「コード生成の民主化」とも言える変化だ。以前は開発者やプログラマーにしか作れなかったEAが、言語化能力とバックテストの読み方を学ぶだけで自作できる環境が整ってきた。
ただし「生成AIが作ったEAは自動的に利益が出る」という期待は危険だ。AIはコードを書く道具であり、「勝てる戦略」を生み出すのはトレーダー自身の思考と経験だ。
生成AI × EA開発を続ける中で最終的に重要だと感じるのは「バックテストの読み方」と「過剰最適化を避ける判断力」の2つだ。この2つを磨くことが、生成AIをEA開発に活かす上での本質的なスキルになる。
よくある質問(FAQ)
Q: 生成AIで作ったEAは実際に利益が出ますか?
A: AIはコードを書くが「勝てる戦略」は作れない。EAの収益性は戦略の有効性によって決まる。バックテストで好成績でも実際の市場では異なる結果になることが多い。デモ口座で十分に検証してから本番に移行してください。
Q: 無料の生成AIでも作れますか?
A: ChatGPT・Claudeとも無料プランでコード生成はできる。ただし1回あたりのやり取りの長さや回数に制限がある。複雑なEAを開発する場合は有料プランの方が効率的。
Q: 既存のEAを改良することもできますか?
A: 可能だが、前提条件がある。.mq5形式のソースコードが必要だ。MQL5 MarketやGogoJungle等で配布される.ex5ファイル(コンパイル済み)は生成AIで改良できない。ソースコードが入手できるEAのみが対象になる。
Q: MT4のEA(MQL4)も同じ方法で作れますか?
A: 基本的には同じアプローチで作れる。ただし「MT4用(MQL4)」か「MT5用(MQL5)」かを最初のプロンプトで明示すること。どちらもClaude・ChatGPTは対応している。
Q: 生成AIでEAを作る場合、どのくらいの時間がかかりますか?
A: シンプルな戦略(1〜2個のエントリー条件)なら最初の動くバージョンを作るのに2〜4時間が目安だ。コンパイルエラーの解消とバックテストによる動作確認まで含めると、初心者は1〜2日かかることが多い。慣れれば同じ複雑さのEAを1〜2時間で作れるようになる。
Q: コードが長くなりすぎてAIが全文を扱えなくなった場合はどうすればいいですか?
A: 長いコードはいくつかの部分に分けて対話する方法が有効だ。または「このEAにXの機能を追加したい。機能追加の差分コードだけを生成してください」と指示することで、全文を送らずに部分的な修正だけを依頼できる。コードが複雑になってきたら、機能ごとにファイルを分割することも長期的には有効だ。
免責事項: 本記事はEA開発の技術的情報提供を目的としています。生成AIで作成したEAの動作や収益を保証するものではありません。FX取引は元本損失リスクを伴い、損益はすべて投資家自身の責任に帰します。本番口座での使用前に必ずデモ口座での十分なテストを実施してください。
